大赤字の2階の介護事業を
「明確なターゲット設定」によって、わずか1年で黒字転換

相談のきっかけ

2階事業の稼働率を改善し赤字を解消したい
平成22年8月創業。従業員数32名。2階建ての介護事業所で、1階はふくろうの里(1日型デイサービス:リハビリ・お風呂・食事・お昼寝付き)、2階はリハビリのみを提供するファントレふくろう(半日型デイサービス)となっている。1階は100%に近い稼働率で黒字であったが、令和2年から始めた2階の事業は稼働率20%と低迷、大幅な赤字が課題となっていた。
コロナ禍が始まった頃のオープンだったためスタートダッシュができなかったことに加え、コロナ禍前は頻繁にあった介護事業者のための経営研修会がほぼなくなり、課題解決に向けた勉強を行う機会も失われた。2階施設を軌道に乗せるための方向が見えず悩んでいた時、日本政策金融公庫から岩手県よろず支援拠点との合同相談会を紹介された。

課題整理・分析

競合との差別化を図り「選ばれる力」を強くすることが課題
COは2階施設低迷の背景に何があるのか分析するためヒアリングを行なった。すると、事業者には独自価値の明確化をはじめとしたマーケティング視点が弱いことが判断できた。これは当該事業者だけでなく地域で競合する事業者にも言えた。介護事業は国の制度であるため細かなルールや規制があり、しかもその内容は頻繁に変更される。そういう中で、事業者のエネルギーはルールや規制を順守することに注がれ、「他事業者との差別化」や「選ばれる理由の強化」に対する取り組みが後回しになっていた。ヒアリングを進めると、事業者には介護事業に対する強い信念と独自の取り組みがあることがわかった。そこで、「独自価値の明確化と言語化」「それによるターゲットの設定」「ケアマネ等市場への周知」を課題として設定し取り組むことにした。

解決策の提案と実施

「生涯寝たきりになりたくない人」をターゲット設定して訴求
提供内容を詳しく確認すると、「リハビリ」という言葉ではとらえきれないほど機能向上志向が高かった。またスタッフや機材もハイレベル。これは事業者が「生涯元気に動ける人生を支援する施設」を目指す強い思いからきており、COはこれらを独自価値ととらえ、その言語化として「機能強化型デイサービス」を提案。同時に「生涯寝たきりになりたくない人」をターゲット設定し、言語化として「目指しているのは『寝たきりゼロ』」を提案、セットで使用していくことで合意した。これらはルールや規制がある中でも許される範囲にある表現であることも確認した。COは2階施設専用のホームページを作成することをお勧めし、作成支援を行った。また、利用者募集や看板等にも内容を反映させ、ケアマネ等に周知するようアドバイス。事業者はこれらの提案に迅速に対応した。

支援の成果

20%と低迷していた稼働率が約1年で一気に90%超に向上
「寝たきりゼロを目指す機能強化型デイサービス」と明確化した価値は、施設選定に強い影響力を持つケアマネージャーから、また地域広報誌やホームページ、看板等を通じて利用者に確実に伝わった。プロモーション直後からすぐに結果が現れ出し、20%だった稼働率は約1年後の令和4年3月に90%を突破。見事に黒字化を果たした。以降も安定した稼働率を維持している。

◎相談者の声

高品質なサービスを行っている自負はありましたが上手に伝えることができていませんでした。よろず支援拠点の提案は、私たちの提供価値がズバリ表現されており、利用者募集やケアマネさんへの説明に説得力が生まれました。また、丁寧な指導のおかげでホームページなどを自分たちで作成できたことは大きな自信につながりました。

◎岩手よろず支援のポイント

事業者にはすでに優れた提供価値があること。それを市場に伝えられれば「選ばれる力」が確実に強くなること。伝えるためのツール作成はご自分たちでできること。これらを丁寧に伝えることで自信を持っていただくことに努めた。その結果、取り組むべきことが明確になり、事業者自らが目的別に必要なツールを手づくりするなど、積極的な行動につながったと考えている。

担当コーディネーター佐藤 和也CO

株式会社福老
◎代表者名/代表取締役 高橋 誠志
◎住所/岩手県花巻市桜台二丁目24-30
◎電話番号/0198-33-0183
◎HPアドレス/https://www.fun-t.com/