ウェブ制作部門の立ち上げで多様なニーズに対応
相談のきっかけ
印刷ニーズの減少とコロナ禍の打撃
明治45年に代表の祖父が九戸郡久慈町に九戸活版所を創業。創業して長くの間、岩手県北部唯一の印刷所だった。その後、活版印刷から和文タイプ、写植、電子製版と時代に対応しながら昭和58年に法人化。久慈地域の民間企業、官公庁の印刷物関連を幅広く手掛けている。近年は印刷物の需要が減少してきたことから、新しい事業の柱となる商品やサービスを模索しているところである。
年々、紙の印刷物に対する需要が減少する中、打開策を求めて度々よろず支援拠点を訪れていた。さらに2020年からはコロナ禍の影響でイベントが軒並み中止。官公庁、民間企業問わず関連の印刷物受注が大きく減少した。資金面では各種支援施策の活用で乗り切ることができたものの、売上を伸ばす方策を求めて久慈市で定期的に開かれている合同相談会に参加した。
課題整理・分析
限られたリソースの中で利益を伸ばすために
コロナ禍に対する各種支援制度を活用し、当面の経営は維持できる状況ではあった。しかし、コロナ禍以前から緩やかに売上が減少。長期的に見て、ここで手を打たないと手遅れになる可能性があった。UV印刷や昇華プリントなど、紙以外のアイテムに印刷する機械を導入するアイデアもあったが、大きな投資が必要かつ久慈地域では市場が狭すぎるため、リスクは大きい。このため、金銭的にも人的にも大きなリソースを投入せずに収益を上げられる事業を社内に持つことが課題であると判断した。
解決策の提案と実施
ウェブ制作部門の立ち上げ
担当COは地域のニーズ、競合の状況からウェブ制作部門を立ち上げて印刷事業との2本柱として育てることを提案した。特に海産物などの特産品が豊富な久慈地域の場合、ネット通販への期待が特に高い。「安く印刷を受けてくれる業者」から、ゆくゆくは「印刷物とウェブの両方に通じた広告宣伝の専門家」にポジションをシフトすることで、利益を伸ばしていくというビジョンを相談者と共有。これまでは、ウェブ制作の依頼があった場合は全て外注に出していた。そこで、印刷部門からウェブ制作の心得があるスタッフを抜擢。併せて営業部門の担当者とチームを作り、受注に向けて勉強を開始。テストサイトを作成して技術を身につけると同時に、既存顧客への営業活動を進めていった。
支援の成果
動き始めた新事業の成果
2022年度末で受注、納品まで完了した案件は3件。並行して仕掛かり中の制作案件が3件。立ち上げたばかりの事業で、総売上に対するウェブ部門の売上は1パーセント程度に留まる。しかし、ウェブと印刷をセットにした受注や、補助金を利用しての制作など、これまで着手していなかったパターンでの受注も現時点で生まれており、今後の伸びが期待できる。
◎相談者の声
まだまだウェブ部門は立ち上がったばかりですが、お客様に提案できる幅が増えたことが最大のメリットでした。ウェブサイトやネット通販と紙の印刷物を組み合わせた提案は弊社の強みになっていくと思います。立ち上げまで最初から細かく支援していただき、感謝しています。
◎岩手よろず支援のポイント
担当COはウェブ制作の専門家であることから、自らの経験をフルに活かして営業先へのアプローチから制作の技術的な内容に至るまで段階ごとにノウハウを提供。「クライアントの課題をウェブで解決する」ことを念頭に事業を進めていけるよう心がけ、支援した。
担当コーディネーター:笹平 拓CO
有限会社九戸印刷
◎代表者名/代表取締役 晴山 良一
◎住所/岩手県久慈市長内町24-10-13
◎電話番号/0195-52-1113
◎HPアドレス/https://www.kunoheinsatsu.jp/