スタッフのマルチタスク・シフト調整に注力し、
人件費400万円削減(前年比10%減)
相談のきっかけ
人件費の割合が多く、改善のための施策を実施したい
信用金庫から案内されたよろず支援拠点の活用や、経営改善支援センター事業による専門家支援により、従来できていなかった「ネット集客」に注力。下落する一方だった売上が上振れ基調に転換されている。
もう一つの課題として挙げられていたのが人件費の問題であり、売上高対人件費比率が50%近くになる状況にあった。人件費の削減を目指し何か施策を講じなければと考えた際、シフト管理が重要であることは理解できていたが、具体的な手法の転換ができずにいる中、再度よろず支援拠点に相談し、管理方法についてアドバイスを得ることとした。
課題整理・分析
昔からのシフト管理体制、タスクの片寄が課題
第一段階として、売上高とスタッフのバランスを 「売上高÷人員数」として日別で繁忙月、閑散月、通常月で日別で確認した。これによると、当該指数は最大で20倍程度まで広がる日があり、極めてアンバランスな人員配置をしていることが分かった。
上記の上で、COが、スタッフ全員(部門別)のシフトと、業務内容(所要時間)をヒアリングし、シートに落とし込み可視化した。その結果、「1つの業務の為に出勤するスタッフが多数」「業務と業務の間の、空白時間(休憩以外の空白時間)がある」等、『無駄な時間』が多い事が判明。
原因としては、「スタッフが出勤したい時にシフトを入れる」「休みたい時に休む」という、昔からのシフト管理体制がそのまま引き継がれて来た事だった。
以前は、団体客や湯治客、日帰り宴会も多く、売上金額が高かった為、人件費をまかなえていたが、現在の売上規模では人件費の割合が多くなっている事は明確だった。
利益が出ない原因は以前から分かっていたが、シフト作成をする専門スタッフ(シフト管理の為のスタッフ)が、昔からのベテランスタッフだった事もありシフト管理には前支配人にもテコ入れ出来ずにいた。
今回支配人が変わり、金融機関への支払い・スタッフへの給与支払い厳しくなってきたことから「シフト管理不足」「タスクの片寄り」を課題として設定し、
佐々木支配人が中心となり実行する事にした。
解決策の提案と実施
マルチタスクの提案と、シフト管理による人件費削減を可視化
シフトの分析から『マルチタスク』の実行は必須だと判断。※マルチタスクとは、スタッフ1名が多数の部署の業務を行う事。星野リゾートは旅館業でいち早くマルチタスクを実行して、利益が出やすい体制を作っている。
COは、「各タスクと所要時間」をリストにし、支配人と共にスキルMAPを整理した。スタッフ毎に『出来る業務』『出来ない業務』をヒアリングし、シフト案を作成する材料とした。スキルMAP作成していると、「フロント・事務所部門」以外のスタッフは、出来る業務が少ない為に、シフトの片寄が生じているという事が判明した。支配人と共に業務を整理した事で、支配人が思ってた以上に「多数の業務出来る」スタッフが少ないという事が判明し、意識が統一出来た。
また、今までは集客に合わせてのシフトは組んで居なかった為、客数とスタッフの数は比例していなかった。今後は集客に合わせてのシフトを作成する為の案を作成する事になり、COが『シフト案』を4パターン作成する。※「A:日帰り・宿泊共に客が少ない」~「D:日帰り・宿泊共に客が多い」
支配人に『シフト案』を説明し、実行を促したが集客に合わせた「人数」「配置」が上手く考えられないとの事だった為、「集客状況:日帰り・宿泊の人数」を入力すると、自動で「人数(配置毎)」が算出される様に、シートを作成し提供した。
支援の成果
シフト管理・時間調整を行い、前年比10%(年間400万円)削減
相談者は、「シフト人数自動計算ツール」を運用し、集客に合わせた人員配置、シフト作成を行っている。現場の意識も少しずつ変わって来て、「他部門の業務ヘルプ」も自主的に行うスタッフも居るとの事。
その結果、昨年対比で月額30万円弱の人件費削減が出来ている為、年間の削減金額は400万円程になるとの事で、早速効果も出始めている。昨年対比では10%の人件費を削減出来ている。
まだ人件費の割合が売上の4割程を占めている為、売上の3割を目指すとの事。
◎相談者の声
昨年から、よろず支援拠点に相談に乗っていただき、私の手が届かない部分のサポートをして頂き、とても助かりました。私1人ではシフト管理について、メスを入れる事が出来なかったと思います。よろず支援拠点のコーディネーター・チーフコーディネーター、金融機関の担当者の方が当館の為に動いて頂いたので、シフト管理に注力出来たと思います。
まだ改善が必要な状態ですが、教えて頂いた事を継続して運用し、地域の皆様やスタッフに愛される温泉旅館にしていきたいと思います。
◎岩手よろず支援のポイント
田舎の企業での人員の削減やシフト調整は、非常に勇気がいる事で、管理職の方々も踏み切る事が難しい場合が多い(ターゲットが地域の住民という事や、近所付きあい・風評被害もある為)。「リストラ」や「退職を促す」という事では無く、「時間を調整する」という形での人件費削減を促し、『マイナスのイメージ』を払拭する事が重要と考え、支配人へのヒアリングや協議を重ねた。
また、シフト管理については支配人も担当した事が無かった為、出来る限りのツール作成はコチラ側で行い、「初めの1歩」を踏み出して貰う事を優先に動いた。
株式会社 永岡温泉
◎代表者名/髙橋宏哉
◎住所/岩手県胆沢郡金ヶ崎町永沢石持沢6-284 ◎電話番号/0197-44-3420